株式会社チームクリエーションスタッフブログ

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今のあなたが『全力を出し切れていない』理由:その②

W杯もいよいよ決勝トーナメントに入りましたね。
ちょうどW杯での日本代表対ポーランド戦で物議を醸している点のひとつが『チームは全力で戦っていなかったのではないか?』という部分だと思います。

全力を出せるのにもかかわらず戦略としてそれをしなかった、と捉えることもできますが、見方を変えれば『全力で決勝進出を獲りに行った』とも捉えられます。

賛否両論あると思いますが、みなさんはどう捉えたでしょうか?

 

さて、この『全力』のお話。

先週から引き続きお伝えするのは「全力を出している(と思っている)のに評価されない」とか「もっとできると思うけどどうすればいいかわからない」という状態のとき。

水槽を泳ぐ魚の群れの例え話のつづきです。

なぜか水槽の右半分だけを回遊する魚の群れは、ある時から水槽の左半分には行かなくなっていました。水槽の真ん中に仕切り板が入り「あちら側には行けない」と学習したからでした。仕切り板を取り払われても学習効果で「行けない」と思い込んだまま、板はないのに右半分だけを回遊し続けたんですね。

それが再び水槽全体を泳ぎ回ることができたのには、ひとつのきっかけがありました。

お察しの方もいらっしゃるかもしれません。
そうです、「仕切り板があったことを知らない魚」を1匹、水槽に入れたことでした。

「行けない」と学習した魚の群れをよそに、その新入りは水槽全体を自由に泳ぎ回ります。仕切り板で痛い思いをした魚の群れは最初のうち「そこを通ると痛いのに…」と呆れ、バカにしていたかもしれませんね。

でもある時、自由に左半分に撒かれているエサを独り占めしている新入りを見ていた群れの中の1匹がこう思います。

『もしかして、あちら側にも行けるのかなぁ…』
『よし、行ってみよう』
『あれ?痛くない…行けた!』

こうして群れの中に「行ってみよう」と思う魚が徐々に増えていき、群れはついに水槽全体を泳げるようになった、ということでした。

この魚の群れの話は、セグマリンという心理学者が実際に実験をし『学習性無力感』を証明したと言われています。頑張っても望む結果を得られないという経験をし、その状況が続くと「何をしても変わらない」といった無力感が作られて、行動を抑制するようになるというものです。

 

水槽全体を泳げるはずの魚の群れは「行けない」という思い込みにより右半分だけを泳ぎ続けていました。

わたしたちにも無意識に「意見を言っても受け入れられない」「ああいう言動をすると誰かが困ってしまう」といった思い込みによって、行動を制限されていることがあります。誰かを傷つけたり、自分が傷ついたりした過去の痛い経験が、見えない透明な仕切り板の役割を果たして『あちら側に行けない(=その行動をしてもムダ)』という既成概念を作り出していることがあるんですね。

「見えない思い込み」を突破するにはまず、自分の中にあるそうした既成概念は何か?を知るために自分自身をしっかりと見つめること。そして、後から入れられた新入り魚のように「その行動をしたら痛いよ…」と感じる人をちゃんと見て、怖さを乗り越えて『よし、自分も行ってみよう(=怖いけど行動してみよう)』と勇気を出すことです。

水槽の右半分しか回遊できなくなった群れは「いつも通りの全力」で右半分だけを泳ぎ続けていました。ですが本来は「水槽全体を泳ぐことのできる全力」を出すことができるはず。仕切り板のせいで痛い思いをしたから『あちらには行けない』と思い込んでいる…自分とは違う行動をしている新入りの力を借りて、その怖さを乗り越えたことこそが、本来の全力を出すための秘訣なんですね。

 

そうは言っても、まず自分の中にある思い込みを知る作業は本当に難しいです。なにせ無意識なんですから。でも日常の中には「透明な板に色がつく瞬間」が必ずあるんです。

それが、誰かの行動を見てイライラしたり落ち込んだりする時。
ちょうど自由に泳ぎ回る新入り魚を見ていた群れが「痛い思いをするのに…」と呆れたりバカにしたりしているのと同じです。

過去にあった透明な板という思い込みの存在があるからこそ「その行動をしてもムダ」という自分の中の既成概念がイライラや落ち込みといった感情によってあぶりだされるんですね。

そしてさらに、勇気を出して怖さを乗り越え「やっても無駄」とか「やってはいけない」と思い込んでいるその行動をやってみること。これはもっと難しい。痛い思い、つまり自分や誰かを傷つけてしまうのではないか?という恐れの気持ちをグッと抑えて、安全な水槽の右半分から出るということなのですから。


でも、本当はもう透明な板はないのかもしれません。
過去はそのせいで痛い思いをしつづけたけれど、今は違うかもしれない。

新入りを見て勇気を出した群れの中の最初の1匹のように「今までと違う行動」を選択できたら。

そのときこそ、あなた本来の『全力』が出せているはずです。


(伊藤)